- 2026年4月2日
- 2026年4月1日
交通事故後の整形外科受診と診断書発行の流れ|むち打ち症の適切な対応方法

交通事故に遭われた方にとって、事故直後の対応は今後の治療や補償に大きく影響します。
特に「むち打ち症」と呼ばれる外傷性頸部症候群は、事故直後には症状が現れにくく、数日後に痛みやしびれが出現することも少なくありません。
私は長年、交通事故による外傷の診療に携わってきましたが、早期の適切な対応が後遺症予防の鍵となることを実感しています。この記事では、交通事故後の整形外科受診の重要性、診断書の発行手順、むち打ち症の治療期間まで、患者さまが安心して治療に専念できるよう詳しく解説します。
交通事故後は速やかに整形外科を受診すべき理由
交通事故に遭った場合、「症状が軽いから」「何ともないから」という理由で受診を先延ばしにされる方がいらっしゃいます。しかし、これは非常に危険です。
事故直後は気が張っていることもあり、症状を感じないことがあります。実際には身体が損傷を受けていても、アドレナリンの分泌により痛みを感じにくい状態になっているのです。
後日、以下のような症状が現れるおそれがあります。
- 首の痛み
- 頭痛
- 肩こり
- 吐き気
- めまい
- 腰痛
ケガの度合いによっては命にかかわることもあるため、放置せずにかならず医療機関で受診しましょう。

事故との因果関係の立証が難しくなるリスク
事故発生後、時間が経ってから医療機関で受診した場合、相手方から「事故と関係がないのでは」と事故との因果関係を否定されるなど、トラブルに発展するおそれがあります。
実際、事故から時間が経った後に医療機関で受診した場合は、事故との因果関係が立証できないケースがあります。
遅くとも事故後1週間以内、できれば事故当日または翌日には整形外科を受診することが望ましいです。
整形外科と接骨院の違いを理解する
交通事故に遭い、接骨院に行く方が時折いらっしゃいますが、おすすめできません。
理由は、接骨院は柔道整復師による施術所であり、レントゲン、エコーなどの機器を使った法的な医療検査や医療行為を行えないためです。
整形外科クリニックでは、単純レントゲン写真や超音波検査、MRIなどによる画像的な評価を行うことができます。また、医師による正確な診断と、診断書の発行が可能です。
整骨院だけに通院していた場合、後遺障害診断書を作成できないという重大な問題があります。交通事故に遭った場合は、必ず整形外科などの医療機関で診察を受け、定期的に通院して治療やリハビリを受け続けることが重要です。
診断書の重要性と発行手順
診断書は、交通事故による被害を適切に証明するために必要な詳細が記載される重要な書類です。
これにより、保険申請や損害賠償交渉が円滑に進む役割を果たします。
診断書が必要な理由
交通事故でケガをした場合には、治療を受けた病院の医師に、診断書を作成してもらう必要があります。診断書が必要になる理由は以下の通りです。
治療費などの支払いを受けるため・・・保険会社が治療費を支払うにあたり、傷病名や治療内容についての情報を得るために、治療を行う医師が作成した診断書が必要になります。また、慰謝料などの損害賠償金額は、ケガの内容、入通院期間や通院回数によって変動します。したがって、最終的な賠償額の確定のためにも診断書が必要になります。
人身事故として扱ってもらうため・・・自身が被害を受けた交通事故を、人身事故として処理してもらうために、警察に診断書を提出する必要があります。診断書を警察に提出しない場合、交通事故は「物損事故(物件事故)」として処理されます。
後遺障害の認定を受けるため・・・後遺障害等級の認定のためにも、診断書の提出が必要です。「後遺障害診断書」という専用の書式を用います。

診断書の記載内容
診断書には、次のような項目が記載されます。
- 氏名・生年月日
- 住所・電話番号
- 事故日時
- 事故場所・事故状況
- 診断名(傷病名)
- 症状
- 治療内容
- 治療期間
- 医師の所見
なお、診断名には「外傷性頚部症候群」「頚椎捻挫(頸椎捻挫)」「頚部打撲」「頚部挫傷」などと記載されるでしょう。
診断書の発行手順
診断書は、整形外科で医師の診察を受けたうえで発行されます。まずは「交通事故に遭ったこと」をしっかりと医師に伝えましょう。
診察の際には、痛みがある部位や症状を丁寧に説明し、必要に応じてレントゲンや超音波などの検査を行います。その後、診断が確定すると診断書を作成することができます。
診断書が必要な理由(例:警察提出、自賠責保険用など)を事前に伝えておくと、適切な形式で発行されます。
診断書の作成費用(文書料)は、医療機関によって異なりますが、およそ3,000円から5,000円が相場です。診断書作成費用は相手方に請求可能なので、領収書は無くさずに保管してください。
診断書の提出期限
警察に診断書を提出する期限は明文化されてはいませんが、事故発生から10日以内に提出することが望ましいです。
とはいえ、病院によって診断書が作成されるまでの期限は様々なので、できるだけ早く病院へかかり、診断書の作成を依頼するようにしてください。
交通事故によりむちうちを負ったことを証明することが診断書提出の目的なので、事故から日をあけてからの通院や診断書の提出は避けましょう。
むち打ち症(外傷性頸部症候群)の症状と治療
むち打ち症は、交通事故による急性外傷性頸部症候群の略称です。追突事故などで身体に急激な外力が掛かり、首や腰がむちのようにしなることで首の筋肉や関節、神経が損傷し、痛みやしびれ、めまいなどの症状があらわれます。
むち打ち症の典型的な症状
交通事故後は軽症に見えても数日後に症状が悪化することがあります。以下のような症状は「外傷性頸部症候群(むち打ち)」の典型症状です。
- 首の痛み
- 頭痛
- めまい
- しびれ
- 倦怠感
むち打ちを含め、交通事故でケガをしたことの証明になりますので、診断書は必ずもらってください。警察へ届け出に必要になったり、相手方への損害賠償請求での根拠資料になったりと、必要になってくるシーンは様々です。

むち打ち症の治療方法
当院では診断書作成や継続リハビリも含め、事故後の長期フォロー体制を整えています。
交通事故による頸椎捻挫などの外傷は、事故前には無かった症状ですので、事故前の痛みのない状態に戻るように、しっかり治療する事が重要です。
正確な診断を下して、投薬や正しい方法によるリハビリテーションを行います。当院では機械によるリハビリテーション、理学療法士によるリハビリテーションの治療をしております。
急性期の治療・・・炎症コントロール、鎮痛治療、安静管理を行います。
回復期の治療・・・再発防止リハビリ、体幹トレーニング、姿勢指導まで行い、再発を防ぎます。
むち打ち症の治療期間
むち打ち症の治療期間は個人差がありますが、多くの場合、長期には症状が改善し予後良好な疾患です。
しかし、中には症状が遷延化し日常生活動作にとてもお困りの方が見受けられます。
お時間が許す範囲で通院していただく治療が可能です。十分な治療を行っても痛みしびれが残り、不幸にも症状の改善の見込みが乏しい患者様がいらっしゃる場合は、後遺障害診断書の作成も行います。
人身事故と物損事故の違い
診断書を警察に提出しない場合、交通事故は「物損事故(物件事故)」として処理されます。人身事故ではなく物損事故(物件事故)として処理されると、警察による実況見分調書が作成されません。
物損事故として処理されるデメリット
後々に過失割合の交渉で争いになった際に詳細な事故状況がわからず、交渉が長期化するリスクがあります。
人身事故では、警察や検察が、実況見分調書や供述調書を含む刑事記録を作成します。この刑事記録が、過失割合を定めるための有力な証拠になります。
対して、物件事故の場合には、刑事事件として捜査は行われず、簡易な「物件事故報告書」が作成されるのみになります。そのため、事故態様を巡って加害者側と意見が対立した場合に、過失割合の決め手に欠けることになるのです。
被害者に支払われる損害賠償額は、「過失相殺」により、損害の総額から被害者の過失分を差し引いた金額となります。そのため、過失が大きければ、それだけ被害者が受け取れる損害賠償額が少なくなってしまうのです。
物損事故から人身事故への切り替え
事故直後に警察が到着しても、その場で「大丈夫です」と伝えて人身事故扱いにせず物損事故として処理されることがあります。
しかし後日、首や腰の痛みが出てきて受診した結果、やはり治療が必要ということがわかることもあります。その場合には、診断書を提出することで、物損事故から人身事故へと変更できるケースもあります。
このように、診断書は事故後の重要な判断材料にもなるため、きちんと整形外科で医師の診断を受けておくことが大切です。

交通事故治療の流れ
交通事故に遭われた場合、以下のような流れで治療を進めていきます。
事故直後の対応
まずは警察に連絡を入れてください(交通事故証明書発行のため)。相手の住所、氏名、連絡先、保険加入先を確認しておいてください。事故証明書が無いと、自賠責保険も任意保険もおりませんので、ご注意ください。
ケガの度合いが大きな場合や意識を失いそうな場合は救急電話(119)に連絡し、医療機関の受診を優先してください。
医療機関での受診
事故後に診断書を依頼するタイミングは非常に重要です。事故直後に痛みや違和感を感じなくても、数日後に症状が現れる場合があります。
そのため、事故の当日または遅くとも翌日には医療機関を受診し、むち打ちの可能性を含めた診察を受けることが推奨されます。早期に受診することで、症状と事故との因果関係を明確にすることができ、診断書の信頼性を高めることができます。
検査(レントゲン、CT、MRIを使い全身の状態を確認します)を行い、医師による診察(診断書を作成します)を受けます。状態に合わせて痛み止めや抗生物質、湿布や軟膏などを処方し、理学療法士による専門的なリハビリ、運動療法、物理療法を行います。
保険会社への連絡
加害者、被害者(本人)が加入している保険会社に連絡し、当院の院名、電話番号、住所をお伝え下さい。そうしますと、保険会社から当院に連絡が入ります。
これで自動車保険適用の治療が可能となりますので、患者様の自己負担は発生しません。
当院と保険会社との間で連絡が取れなかった場合、患者様の自己負担となります。診療代を一時的にお預かりさせていただき、保険会社からの連絡が当院に入りましたら、ご返金いたします。
治療の継続
患者様の症状に合わせた治療やアドバイスをし、痛みの改善や機能回復を図っていきます。
症状が改善し、後遺症の心配がないようであれば治療は終了です。治療が終わり次第、保険会社に連絡を入れてください。当院からも保険会社に治療終了の連絡を入れて治療は終了し、示談へと話が進んでいきます。
後遺障害診断書について
交通事故による外傷では十分な治療を行っても痛みしびれが残り、不幸にも症状の改善の見込みが乏しい患者様がいらっしゃいます。
また、交通事故による治療は無期限に行うことはできないため、症状が残存していても治療が終了となってしまう患者様もいらっしゃいます。
症状固定とは
この状態は症状固定とされ、交通事故による残存した症状を後遺障害として認定を受けるために、医師による後遺障害診断書の作成が必要になります。
症状固定とは、「これ以上治療してもケガが改善しない状態」のことです。後遺障害認定を受けるには、症状固定に達したと医師から診断されなければいけません。
後遺障害診断書の作成
後遺障害診断書には、整形外科医師により客観的に提示がされていることが必要です。整骨院等では後遺症診断書の書類を作成はできません。
後遺障害診断は、交通外傷の治療経験が豊富な整形外科医による診断を受けることを推奨します。
後遺障害診断書には決められた書式があり、後遺症の症状や部位、検査結果、今後の見込みといった項目が記載されます。後遺障害の認定は基本的に書面審査で行われるため、後遺障害診断書の内容はとても重要です。
当院では、交通外傷に関わる講習・勉強会の講師や、後遺症認定業務の担当をおこなっております。症状に応じて後遺症診断も行いますので、お気軽にご相談ください。
まとめ:交通事故後は早期受診と適切な診断書が重要です
交通事故に遭われた場合、早期の整形外科受診と診断書の取得が、今後の治療と補償を受けるために極めて重要です。
事故直後は症状がなくても、数日後に痛みやしびれが出現することがあります。遅くとも事故後1週間以内、できれば事故当日または翌日には整形外科を受診しましょう。
診断書は、警察への人身事故届出、保険会社への賠償請求、後遺障害認定の申請など、様々な場面で必要になります。整形外科で医師の診察を受け、適切な診断書を作成してもらうことが大切です。
むち打ち症は、多くの場合、適切な治療により改善しますが、症状が遷延化する場合もあります。当院では、交通事故による外傷の診療経験が豊富な医師が、診断書作成から継続的なリハビリまで、長期的にサポートいたします。
渚うめだ整形外科クリニックでは、交通事故治療に関する各種手続きを丁寧にご説明し、患者さまが安心して治療に専念していただけるよう、親身な対応を心がけています。
交通事故に遭われた方、むち打ち症でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。大阪府枚方市・京阪本線「御殿山駅」徒歩3分の当院で、地域の皆さまの健康をお守りします。
【著者情報】

渚うめだ整形外科クリニック 院長 梅田 眞志
関西医科大学卒業後、同大学大学院博士課程を修了し、再生医療の研究に従事。医学博士。
これまで、八尾徳州会病院、天心堂病院、社会保険滋賀病院、弘道会 萱島生野病院、関西医大枚方病院などで、脊椎疾患・関節疾患・骨粗鬆症・骨折などの外傷治療に幅広く携わってきました。
2018年に渚うめだ整形外科クリニックを開院。地域に根ざした整形外科医療を通じて、運動器疾患のかかりつけ医として診療を行っています。
主な経歴
・2000年 関西医科大学 卒業
・2008年 関西医科大学大学院 博士課程修了(再生医療の研究に従事)
・八尾徳州会病院
・天心堂病院
・社会保険滋賀病院
・弘道会 萱島生野病院 整形外科 医長
・関西医大枚方病院 整形外科(脊椎外科・骨粗鬆症担当)
・2018年 渚うめだ整形外科クリニック 開院
資格・所属学会
日本整形外科学会 整形外科専門医/日本整形外科学会 認定運動器リハビリテーション医/日本整形外科学会 認定リウマチ医/日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医/日本骨粗鬆学会認定医
日本整形外科学会、日本骨粗鬆学会、日本骨折治療学会、日本抗加齢学会に所属。国内外の学会・シンポジウムでも多数の講演実績があります。
