- 2026年4月2日
- 2026年4月1日
骨粗鬆症の早期発見が命を守る|無症状でも進行する骨密度低下のリスクと対策

骨粗鬆症は「静かな病気」
骨粗鬆症は「静かな病気」と呼ばれています。
なぜなら、骨密度が低下し骨がもろくなっても、多くの場合で痛みや違和感といった自覚症状がほとんど現れないからです。
転倒や軽い衝撃で骨折して初めて、自分が骨粗鬆症だったと気づく方が非常に多いのが現実です。
国内では推計1,280万人の患者がいるとされ、特に女性では閉経後に急激に骨量が減少します。
骨粗鬆症による骨折は、背骨(圧迫骨折)、大腿骨(太ももの付け根)、手首、肩などに起こりやすく、一度の骨折が「要介護」や「寝たきり」のきっかけになることも少なくありません。
実際に、「転んで骨折 → 入院 → 筋力低下 → 歩行困難 → 寝たきり」という悪循環は、整形外科領域で最も避けるべき問題の一つです。
そのため、骨折してから治療するのではなく、骨折を未然に防ぐことが最重要課題とされています。
骨粗鬆症が増えている背景
近年、骨粗鬆症は増加傾向にあります。
高齢化社会の進行
日本は超高齢社会となり、骨密度が自然に低下する年代の人口が増加しています。
60代女性の5人に1人、70代女性の3人に1人、80歳以上の女性の2人に1人が骨粗鬆症の状態にあると考えられています。
運動不足と生活習慣の変化
デスクワークや在宅時間の増加により、骨に十分な負荷がかからない生活が増えています。
骨は負荷をかけることで強くなる性質があり、運動不足や寝たきりでは骨が脆くなり骨折しやすい状態になります。
栄養バランスの乱れ
カルシウム・ビタミンD不足、リンの過剰摂取、食塩過剰摂取、極端な食事制限などが骨密度低下の原因となります。
女性ホルモンの低下
閉経後の女性は、女性ホルモン(エストロゲン)の低下により骨の分解が急激に進みます。
エストロゲンは骨の分解作用を抑える働きを持っているため、閉経によりエストロゲンが不足すると骨量が急激に減少します。
つまり、骨粗鬆症は誰にでも起こり得る「身近な疾患」なのです。
早期発見が命を守る理由
骨粗鬆症は初期に気づきにくいものの、骨折のリスクと直結しています。

骨折リスクとその後の負担
骨密度が極端に下がった状態で転倒すると、非常に骨折しやすくなります。
高齢者であればあるほど回復が遅く、長期のリハビリを余儀なくされるケースが増えます。
介護や医療費の負担が大きくなるだけでなく、長期入院や安静によって心身の機能が低下するリスクも高まります。
骨が折れたあとで気づいたのでは遅いため、無症状の段階から検査を受けることが望ましいです。
脊椎への負担と姿勢への影響
脊椎は身体の中心で体重を支えているため、骨粗鬆症による骨密度低下で傷つきやすい部分です。
椎体が潰れたり変形したりすると背骨のカーブが変わり、前傾姿勢が強くなることがあります。
日常動作に負担がかかりやすくなり、肩や首、腰のこりや痛みにつながります。
気づきにくい骨折で注意したいのが、背骨の圧迫骨折です。
くしゃみや重い物を持ったときなど、ふとした動作で背骨がつぶれるように折れます。
放置すると身長が縮んで背中や腰が丸くなり、高い場所に置いた物が取りにくい、歩きにくいなど日常生活の質が低下します。
要介護の原因として
2019年の国の調査では、「65歳以上の方が要介護者となった主な原因」として、「転倒・骨折」は「認知症」や「脳血管疾患」などに次ぐ4番目です。
高齢者が太ももの付け根を骨折すると、リハビリテーション医療がうまくいかず寝たきりにつながることもあり、死亡するリスクも高くなります。
骨粗鬆症の検査方法
骨粗鬆症の早期発見には、定期的な検査が不可欠です。
骨密度測定(DXA法)
主な骨量の測定方法は3種類で、X線を用いる二重エネルギーX線吸収法(DXA法)とMD法、超音波を用いる定量的超音波測定法(QUS法)があります。
このうちDXA法は背中や足の付け根の骨などに2種類のX線を当てて骨量を測るもので、他の測定法と比べて精度が高いです。
腰椎・大腿骨で正確な骨密度を測定し、将来の骨折リスクを数値化して評価します。
検査時間は検査着に着替えるため約10分で、被曝線量は胸部レントゲンよりも低線量です。

血液検査による骨代謝評価
骨の作られ方・壊れ方(骨代謝マーカー)を確認し、治療方針を最適化します。
骨は日々新陳代謝を行っており、分解と形成を絶えず繰り返しています。
血液検査により骨代謝の状態を把握することで、より効果的な治療計画を立てることができます。
画像検査
レントゲン検査により、既に骨折が起きていないか、骨の変形がないかを確認します。
特に背骨の圧迫骨折は痛みが軽いもしくは痛みがないため、骨折に気づかない患者さんもいます。
白髪やシワと同じく加齢に伴うものだと認識されがちですが、背骨の圧迫骨折が原因の場合があります。
こんな方は早期検査を推奨します
以下に当てはまる方は、早期検査が非常に重要です。
- 50歳以上の女性
- 閉経後の女性
- 身長が縮んできた
- 背中が丸くなってきた
- 以前に骨折したことがある
- 家族に骨粗鬆症がいる
- 長期ステロイド治療中
- 運動不足
誰にでも起こりうる病気ですが、高齢者や、女性で母親や祖母の背中が曲がっていたり骨折の既往歴があったりする方、平均より少し早い45歳ごろまでに閉経を迎えた方は、骨粗鬆症を発症するリスクが高いです。
重要なのは、医療機関で定期的に検査・検診をして、骨の状態を確認することです。
早期に骨粗鬆症を発見できれば、治療して骨折するリスクを下げることができます。
骨粗鬆症の予防と対策
骨粗鬆症は予防が可能な疾患で、予防の三原則は「食事・運動・日光浴」です。

食事による予防
バランスの良い食生活を心掛け、なかでもカルシウムとカルシウムの吸収を助けるビタミンDを多く含む食品を取るようにしましょう。
カルシウムを多く含む食品には、牛乳、チーズ、ヨーグルト、小魚、大豆製品、緑黄色野菜などがあります。
ビタミンDを多く含む食品には、サケ、サンマ、イワシ、きのこ類などがあります。
体重はやせ過ぎだと骨折リスクが高まり、太り過ぎだと続発性骨粗鬆症や他の生活習慣病のリスクになるため、適正体重の維持に努めましょう。
食が細くて食事から十分に摂取することが難しい場合は、サプリメントなどで補う方法もあります。
ただし、カルシウムは過剰に摂取すると高カルシウム血症など別の疾患を引き起こす恐れがあるので、骨の検査時にあわせて医師と相談してみるとよいでしょう。
運動による予防
運動により、閉経後女性の骨量低下を抑制することができます。
ウォーキング、ランニングなどの中等度の運動が骨量低下を防止するとの報告があります。
運動は骨量を維持する上で有効とされており、また、骨折するリスクを招く「転倒」を予防する上で重要な、筋力・バランス能力を保つ目的もあります。
体への負荷が強い運動は転倒を招いたりして怪我につながる恐れがあります。
ウォーキングやヒールレイズ(かかと落とし)、片足を上げて行うダイナミックフラミンゴ療法、椅子を使ったスクワットなど比較的安全に行える運動を継続して取り組みましょう。
日光浴による予防
ビタミンDは紫外線に当たることで皮膚でも生成されます。
日光浴の時間は夏なら木陰で30分、冬なら1時間程度で十分です。
適度な日光浴(1日15分程度)を活用してください。
生活習慣の改善
アルコールの過剰摂取および喫煙は、骨粗鬆症など様々な疾患を発症するリスクとして知られているため、注意してください。
多量のコーヒー摂取も骨密度低下の危険因子となります。
年代別の予防ポイント
骨粗鬆症予防は、年代によって重点が異なります。
10代:最大骨量の獲得
人の一生で骨量が増えていくのは体がつくられていく成長期の間だけです。
女性15~18歳、男性18~20歳頃に最大骨量に到達します。
成長期に最大骨量を高めるよう心がけると骨粗鬆症の予防につながります。
食事から栄養をバランスよく取り、クラブ活動などで運動を習慣にし、過度なダイエットはやめましょう。
20代・30代:最大骨量の維持
青年期以降、骨は代謝を繰り返し、成長期に獲得した最大骨量をおよそ40代ころまで維持していきます。
骨量減少には生活習慣の関与も大きいため、生活習慣を見直し、日常生活で改善できることに取り組む時期となります。
カルシウム、ビタミンD、たんぱく質を積極的に取り、やせ型は骨粗鬆症のリスクが上昇するため過度なダイエットをやめ、運動を習慣にしましょう。
若いうちに骨量測定を受け、自分の最大骨量を知っておくことも重要です。
40代・50代:骨密度減少への対応
骨密度減少が始まり、閉経前から閉経後までの10年で15%減少します。
定期的に骨量測定を行い、骨粗鬆症の早期発見から早期治療に結びつけることが勧められます。
カルシウムとビタミンDを積極的に取り、運動を習慣とし、喫煙と過度の飲酒は控え、骨量を1年に1回程度、定期的に測定しましょう。
60代以降:骨折予防の徹底
骨粗鬆症は加齢とともに頻度が増加するため、定期的に骨量測定を行い、腰や背中にすでに痛みを感じる人は受診するとよいでしょう。
筋肉やバランス能力が衰えると転倒しやすく、骨量が低い人は些細な動作で骨折しやすくなるため、まず骨折しないよう対策が必要です。
カルシウムとビタミンDを積極的に取り、BMIが低い人は骨折するリスクが高いため適切な体重を維持し、ウォーキングなど日常的に運動を取り入れ体を動かし、転倒に注意しましょう。
腰や背中が痛い、身長が縮んだような気がするときは一度受診し、骨粗鬆症と診断されたら骨折を防ぐため治療を開始しましょう。
渚うめだ整形外科クリニックの骨粗鬆症診療
当院では、単なる薬の処方だけではなく、「総合的骨折予防プログラム」として診療を行っています。

骨密度測定(DXA法)
腰椎・大腿骨で正確な骨密度を測定し、将来の骨折リスクを数値化して評価します。
血液検査による骨代謝評価
骨の作られ方・壊れ方(骨代謝マーカー)を確認し、治療方針を最適化します。
薬物療法
患者さまの状態に応じて、内服薬、注射製剤、骨吸収抑制薬、骨形成促進薬などを適切に選択します。
リハビリ・運動療法
骨を強くするには「運動刺激」が不可欠です。
理学療法士による安全な運動指導を行っています。
転倒予防指導
自宅環境・歩行・姿勢・筋力バランスをチェックし、転倒リスクを軽減します。
当院が目指しているのは単なる数値改善ではなく、骨折しない身体、自分の足で歩き続けられる生活、介護に頼らない老後、健康寿命の延伸という「人生の質(QOL)を守る医療」です。
まとめ
骨粗鬆症は自覚症状なく進行し、骨折で初めて気づくケースが多数あります。
しかし、早期発見により骨折リスクを大幅に減らすことができます。
定期的な骨密度測定、バランスの良い食事、適度な運動、日光浴という予防の三原則を実践することで、健康寿命を延ばすことができます。
50歳以上の方、閉経後の女性、身長が縮んできた方、背中が丸くなってきた方、以前に骨折したことがある方は、ぜひ一度検査を受けてください。
小さな痛みや違和感でも、早めの相談が将来の大きなトラブルを防ぐ第一歩です。
当院では、骨折予防・寝たきり予防・健康寿命の延伸を目的とした予防医療を積極的に実施しています。
骨粗鬆症に関するご相談は、お気軽に渚うめだ整形外科クリニックまでお問い合わせください。
渚うめだ整形外科クリニック
大阪府枚方市・京阪本線「御殿山駅」徒歩3分
整形外科・リハビリテーション科・麻酔科
【著者情報】

渚うめだ整形外科クリニック 院長 梅田 眞志
関西医科大学卒業後、同大学大学院博士課程を修了し、再生医療の研究に従事。医学博士。
これまで、八尾徳州会病院、天心堂病院、社会保険滋賀病院、弘道会 萱島生野病院、関西医大枚方病院などで、脊椎疾患・関節疾患・骨粗鬆症・骨折などの外傷治療に幅広く携わってきました。
2018年に渚うめだ整形外科クリニックを開院。地域に根ざした整形外科医療を通じて、運動器疾患のかかりつけ医として診療を行っています。
主な経歴
・2000年 関西医科大学 卒業
・2008年 関西医科大学大学院 博士課程修了(再生医療の研究に従事)
・八尾徳州会病院
・天心堂病院
・社会保険滋賀病院
・弘道会 萱島生野病院 整形外科 医長
・関西医大枚方病院 整形外科(脊椎外科・骨粗鬆症担当)
・2018年 渚うめだ整形外科クリニック 開院
資格・所属学会
日本整形外科学会 整形外科専門医/日本整形外科学会 認定運動器リハビリテーション医/日本整形外科学会 認定リウマチ医/日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医/日本骨粗鬆学会認定医
日本整形外科学会、日本骨粗鬆学会、日本骨折治療学会、日本抗加齢学会に所属。国内外の学会・シンポジウムでも多数の講演実績があります。
