- 2026年4月9日
- 2026年4月1日
背中の痛みの原因となる病気〜部位別の症状と受診の目安

背中の痛みは、日常生活の中で多くの方が経験する症状です。
朝起きたときに感じる鈍い痛み、デスクワーク中に広がる張り感、突然襲ってくる鋭い痛み・・・その原因は実にさまざまです。筋肉の疲労や姿勢の問題だけでなく、内臓の病気が隠れているケースもあります。
背中の痛みを引き起こす病気は、痛みの部位や性質によってある程度予測できます。右側が痛む場合は肝臓や胆のうの疾患、左側なら心臓や膵臓の問題、中央部分では腎臓や脊椎の異常が考えられます。
整形外科医として長年診療に携わってきた経験から、背中の痛みで受診される患者さんの多くは、どの診療科を受診すべきか迷われています。安静にしていても痛みが治まらない場合や、発熱・吐き気などの症状を伴う場合は、内臓疾患の可能性も考慮する必要があります。
背中の痛みを引き起こす主な原因
背中の痛みには、大きく分けて「運動器の問題」と「内臓疾患」の2つの原因があります。
運動器の問題としては、筋肉や骨、神経に関連する疾患が挙げられます。長時間のデスクワークや重い荷物を持つことで、背中の筋肉に過度な負担がかかり、筋肉痛や筋膜炎を引き起こすことがあります。肩こりがひどくなると、肩から背中にかけて広がる「僧帽筋」の緊張により、背部痛として感じられることも少なくありません。

加齢に伴う変化も重要な要因です。
中高年の方では、軟骨や骨、靭帯の劣化により、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった疾患が発症しやすくなります。骨粗鬆症によって骨がもろくなると、知らない間に背骨が圧迫骨折を起こしていることもあります。この場合、痛みを自覚した時点では症状がかなり進行している可能性があるため、早急な受診が必要です。
一方、内臓疾患による背中の痛みは、安静にしていても改善しない特徴があります。身体を動かしたときに痛みが強くなる場合は整形外科的な問題の可能性が高いですが、動作に関係なく持続する痛みや、発熱・吐き気・倦怠感などを伴う場合は、内臓の病気を疑う必要があります。
右側の背中が痛むときに考えられる病気
背中の右側に痛みがある場合、体の右側に位置する臓器に異常が生じている可能性があります。
肝臓疾患(肝炎・肝がん)
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気になっても初期には症状がほとんど出ません。背中の痛みが現れる時点では、病気がある程度進行している可能性があります。痛みは右肩甲骨の下から右背中にかけて感じることが多く、だるさの継続、黄疸、食欲不振などの症状を伴うことがあります。
原因としては、ウイルス感染、多量のアルコール摂取、薬剤性、針刺し事故、性行為、遺伝性などが挙げられます。発熱、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、浮腫、尿の濃染、皮下出血といった症状にも注意が必要です。
胆のう・胆管の疾患(胆石症・胆のう炎)
胆のうは肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵する袋状の臓器で、右上腹部の肋骨の下に位置しています。
胆石症では、胆のう内に石のような固まりができ、右肋骨の下から背中の右側、さらには右肩まで痛みが広がることがあります。特に油っこい食事の後に痛みが強くなるのが特徴で、突然激しい痛みに襲われることもあります。胆のう炎では、黄疸、吐き気、嘔吐、尿の濃染、白い便、下血、下腹部から右脇腹にかけての激しい痛みなどの症状が現れます。
食べすぎ、脂肪分の過剰摂取、肥満、ストレス、不摂生などが胆石の原因となります。胆のう炎は、胆のう内に胆汁の流れを妨げる物質があり、細菌が繁殖することで発症すると考えられています。
腎臓の疾患(腎結石・腎盂腎炎)
腎臓は背中側の腰に近い位置に左右1つずつあり、血液から老廃物を濾し取って尿を作る重要な臓器です。
腎結石では、石が腎臓から尿管に移動すると、突然激しい痛みに襲われる「疝痛発作」が起こります。痛みは背中の腰に近い部分に出ることが多く、血尿、頻尿、吐き気などの症状を伴います。背中を叩いてみて響くような痛みがある場合は、腎結石や腎炎の可能性が高いです。
腎盂腎炎は腎臓に細菌が感染する病気で、高熱、背中や腰の痛み、排尿時の痛みなどが特徴的な症状です。
十二指腸潰瘍
十二指腸は胃の出口から小腸につながる部分で、体の右側に位置しています。十二指腸潰瘍では、背中の右側が痛むことがあり、胆石と症状が似ているため見分けがつきにくい場合もあります。空腹時や夜間に痛みが強くなり、食事をすると少し楽になるのが特徴です。みぞおちの痛み、胸やけ、吐き気なども伴うことがあります。
左側の背中が痛むときに考えられる病気
背中の左側に痛みがある場合、心臓、膵臓、胃、肺といった臓器に異常が生じている可能性があります。
心臓疾患(狭心症・心筋梗塞)
狭心症や心筋梗塞といった心臓の疾患からくる背部痛は、左側に出る傾向があります。
加齢や不規則な生活習慣により、冠状動脈の血管壁にコレステロールが蓄積すると血管内が狭くなり、心臓への血液供給が不足する状態が狭心症です。高血圧、糖尿病、高脂血症による動脈硬化が主な原因となります。
心筋梗塞は、動脈硬化や血管内のプラークが破れて冠状動脈に血栓ができ、心臓への血液供給が途絶える状態です。背中の左側から左下の痛み、動悸、息切れ、呼吸困難、不整脈、頭痛、吐き気、嘔吐、顔面蒼白、冷や汗、血圧の低下などの症状が現れます。
狭心症では胸の痛みが発作的に突然起こり、数分で消えるのが特徴です。心筋梗塞では胸の前部に圧迫感を伴う激痛が走り、痛みが30分以上続きます。明らかに激しい痛みや吐き気など背中以外の症状も併せて出やすく、急を要する病気です。
膵臓疾患(急性膵炎・慢性膵炎・膵臓がん)
膵臓は背中に近い位置にあるため、膵臓の疾患では腹部から背中に貫通するような痛みを感じることがあります。
急性膵炎は、アルコール摂取により膵臓に刺激が与えられ膵液の分泌が盛んになり、膵臓に過度な負担がかかることで発症します。また、胆石が膵管の出口で膵液の流れを塞ぐことでも起こります。みぞおちから左脇腹上部にかけての激しい痛み、黄疸、吐き気、嘔吐、下痢、便秘がみられ、重症化すると顔面蒼白、意識障害、血圧の低下などを招く可能性があります。
慢性膵炎では、膵臓の細胞が少しずつ破壊され、膵臓の形が変形・線維化し、主膵管の狭窄・閉塞を生じます。食事やアルコール摂取により上腹部の鈍い痛みや背中の痛みを慢性的に感じ、下痢や体重減少といった症状が現れます。
膵臓がんは初期には自覚症状がほとんどなく、進行するにつれてみぞおちから背中の痛み、体重減少、黄疸、倦怠感、食欲不振などが現れます。食事とは関係なく、背中の痛みや夜中の腹痛が激しく続くのが特徴です。
胃疾患(胃潰瘍・胃炎)
胃潰瘍や胃炎では、食後しばらくすると、みぞおちに痛みを生じ、背中の痛みが起こることがあります。
暴飲暴食やストレス、内服薬の副作用などの刺激、アレルギー、感染が原因となります。胸やけ、胸や胃のむかつき、吐き気、嘔吐、ゲップ、吐血、下血といった症状を伴います。
肺の疾患(肺炎・胸膜炎・気胸)
肺の病気でも背中の左側、特に肩甲骨の下あたりが痛むことがあります。呼吸困難や咳などの呼吸器症状を伴う場合は、肺疾患の可能性を考慮する必要があります。
背中の中央部分が痛むときに考えられる病気
背中の真ん中、背骨に沿った部分が痛む場合、脊椎の問題や後腹膜臓器の疾患が考えられます。
帯状疱疹
帯状疱疹はウイルス感染による疾患で、神経に沿って症状が現れることから、背中の神経にも痛みが出現する可能性があります。身体の片側の肋間神経に沿って痛みを伴う発疹がみられるのが特徴です。
急性腎炎
背中を叩いてみて響くような痛みがある場合は、腎結石や腎炎の可能性が考えられます。高熱や血尿を伴い、背中から腰にかけての痛みなどが現れます。
食道疾患(食道アカラシア)
食道の蠕動が障害され、胃に近い食道の筋肉が十分開かず、食物の通過障害や食道の拡張が起こる原因不明の食道の機能異常です。固形物だけでなく液体もうまく飲み込めなくなる症状が徐々に進行し、嘔吐が起こります。胸の痛みや背中の痛みが出て、症状の進行に伴い体重が減少していきます。
大動脈解離
大動脈が解離、破裂または破裂しそうになっているときに背部痛が起こります。突然の激痛で裂けるような痛みが特徴で、緊急性が非常に高い疾患です。
整形外科で診るべき背中の痛み
身体を動かしたときや体勢を変えたときに痛みが強くなる場合は、整形外科的な問題の可能性が高いです。
ぎっくり背中(急性背部痛)
急激な動作や無理な姿勢により、背中の筋肉や筋膜に炎症が起こる状態です。突然の鋭い痛みが特徴で、動作時に痛みが増強します。
椎間板ヘルニア(頸椎・胸椎)
椎間板の一部が飛び出して神経を圧迫する疾患です。背中の痛みとともに、足や腕に痺れが出る場合は椎間板ヘルニアの可能性があります。
脊柱管狭窄症
脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される状態です。背中の痛みに加えて、歩行時に足の痺れや痛みが出て、休むと楽になる「間欠性跛行」が特徴的です。
骨粗鬆症による圧迫骨折
骨がもろくなることで、知らない間に背骨がつぶれたように折れてしまう状態です。高齢者に多く、背中の痛みが持続します。痛みを自覚した時点では症状がかなり進行している可能性もあるため、早急な受診が必要です。
筋肉痛・筋膜炎
背中に負荷がかかる作業や無理な姿勢により、筋肉や筋膜に炎症が起こります。安静にしていると痛みは気にならないが、身体を動かすと痛みが強くなるのが特徴です。
受診の目安と診療科の選び方
背中の痛みで医療機関を受診すべきタイミングと、適切な診療科の選び方について解説します。
すぐに受診すべき症状
以下の症状がある場合は、緊急性が高い可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
- 突然起きた、経験したことがない鋭い痛み
- 冷や汗を伴う激しい痛み
- 意識がはっきりしない、ふらつくといった症状
- 息苦しさや呼吸困難感、動悸、胸の痛み
- 高熱、脂汗、意識消失
これらの症状は、心筋梗塞や大動脈解離など、命に関わる重篤な疾患の可能性があります。
早めに受診すべき症状
以下の場合は、病気が隠れているかもしれないので早めに受診してください。
- 安静にしていても痛みが治まらず、逆に悪化する
- 痛みが1カ月以上など長期にわたって続いている
- 発熱や吐き気、倦怠感などが続く
- 黄疸、血尿、体重減少などの症状を伴う
- すぐによくならない
診療科の選び方
安静にしていると背中の痛みは気にならないが、身体を動かしたり体勢を変えたりすると痛みが強くなる場合は、整形外科の受診をお勧めします。筋肉や骨、神経の問題である可能性が高いです。
一方、安静にしていても痛みが治まらず逆に悪化する場合や、整形外科か内科か判断がつけられない場合は、内科の受診をお勧めします。発熱、吐き気、倦怠感など背中以外の症状がある場合も、内臓疾患の可能性を考慮して内科を受診しましょう。
背中の痛みの検査と治療の流れ
医療機関を受診した際に行われる検査と治療の流れについて説明します。
問診と身体診察
まず、医師が詳しく症状を聞き取ります。痛みの部位、性質、いつから始まったか、どのような動作で痛みが強くなるか、随伴症状の有無などを確認します。その後、背中の視診、触診、叩打痛の有無などを調べます。
検査
症状の出方や心配なことを医師と相談しながら、必要な検査を提案します。
尿検査:泌尿器系の病気を疑う場合、尿中の白血球や赤血球の有無を調べます。腎盂腎炎の場合は細菌の有無や種類も確認します。
血液検査:整形外科分野の疾患では通常、顕著な炎症反応は認められませんが、消化器系、泌尿器科系、血管系の疾患では異常が現れる場合があります。膵炎を疑う場合はアミラーゼなどの酵素の上昇を確認します。
レントゲン検査:短時間で撮影が可能で、被曝量が比較的少ない安全な検査です。尿管結石の診断や、整形外科的な骨の異常を確認するのに有効です。
超音波検査:体に害がなく安全な検査でありながら、多くの情報を得ることができます。腎臓や尿管、膵臓などの疾患において詳細な情報を得られます。
CT・MRI検査:より詳細な情報を得るための検査です。尿管結石の大きさや位置、水腎症の状態、大動脈の太さ、膵臓や肺の詳細な状態など、さまざまな情報を確認できます。
背中の痛みの原因がすい臓の場合、腹部エコーでの観察には限界があります。すい臓は胃のちょうど裏側にあるため、体表からのエコー検査では消化管ガスに邪魔されて見えないことも多いです。そこで、当院では超音波内視鏡を行います。超音波内視鏡は胃の中からすい臓に直接超音波をあてることで、すい臓を細かく観察することができます。
治療方法
原因によって、痛み止めを併用しながら治療を開始します。
急性膵炎であれば、軽症であっても基本は入院での治療が必要です。入院可能な施設をご紹介します。慢性膵炎であれば、食事指導と膵臓の酵素の活性を抑える薬を処方します。
整形外科的な問題の場合は、内服治療などの保存的治療を行います。症状の改善が見られない場合や専門的な治療が必要な場合は、専門の医療機関に紹介させていただきます。
背中の痛みを放置しないために
背中の痛みは、思わぬ内臓系の疾患が隠れている可能性があります。
激しい痛みが続く場合、狭心症や大動脈解離など心臓・血管系の疾患の可能性もあります。また、高齢者であれば、背骨がつぶれたように折れてしまう椎体圧迫骨折などの可能性も考慮する必要があります。
当院では、整形外科専門医とペインクリニック専門医が在籍しており、背中の痛みに対して多角的な診療を行っています。運動器疾患だけでなく、内臓疾患が疑われる場合は適切な診療科への紹介も行います。
背中の痛みでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
健康寿命を延ばし、地域寝たきりゼロをめざす当院の理念のもと、患者さん一人ひとりに適切な治療を提供し、自立した生活を支援いたします。
渚うめだ整形外科クリニック
〒573-1183 大阪府枚方市渚南町24-31 なぎさクリニックモール1F・3F
電話:072-848-3755
御殿山駅から徒歩3分
土曜日診療・夜間診療(19時30分まで)対応
WEB受付可能(土曜日と月水金の夕方診療)
【著者情報】

渚うめだ整形外科クリニック 院長 梅田 眞志
関西医科大学卒業後、同大学大学院博士課程を修了し、再生医療の研究に従事。医学博士。
これまで、八尾徳州会病院、天心堂病院、社会保険滋賀病院、弘道会 萱島生野病院、関西医大枚方病院などで、脊椎疾患・関節疾患・骨粗鬆症・骨折などの外傷治療に幅広く携わってきました。
2018年に渚うめだ整形外科クリニックを開院。地域に根ざした整形外科医療を通じて、運動器疾患のかかりつけ医として診療を行っています。
主な経歴
・2000年 関西医科大学 卒業
・2008年 関西医科大学大学院 博士課程修了(再生医療の研究に従事)
・八尾徳州会病院
・天心堂病院
・社会保険滋賀病院
・弘道会 萱島生野病院 整形外科 医長
・関西医大枚方病院 整形外科(脊椎外科・骨粗鬆症担当)
・2018年 渚うめだ整形外科クリニック 開院
資格・所属学会
日本整形外科学会 整形外科専門医/日本整形外科学会 認定運動器リハビリテーション医/日本整形外科学会 認定リウマチ医/日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医/日本骨粗鬆学会認定医
日本整形外科学会、日本骨粗鬆学会、日本骨折治療学会、日本抗加齢学会に所属。国内外の学会・シンポジウムでも多数の講演実績があります。
