• 2026年4月9日
  • 2026年4月1日

肩の痛みの原因となる病気〜症状別の見分け方と対処法

肩に痛みを感じると、日常生活に大きな支障が出ます。

腕が上がらない、夜間に痛みで目が覚める、着替えや洗髪が困難になるなど・・・肩の痛みは生活の質を大きく低下させる症状です。

肩の痛みには、さまざまな病気が隠れている可能性があります。五十肩だと思っていたら実は腱板断裂だった、というケースも少なくありません。適切な診断と治療を受けるためには、それぞれの病気の特徴を知ることが大切です。

本記事では、整形外科専門医として長年にわたり肩の痛みに悩む患者様を診察してきた経験から、肩の痛みを引き起こす代表的な病気について、症状別の見分け方と対処法を詳しく解説します。

肩の痛みはどこから生じているか

「肩が痛い」と訴える患者様は非常に多くいらっしゃいます。

しかし、実は「肩」という言葉が指す範囲は、一般的な認識と医学的な定義で異なることがあります。日常会話で「肩」と言って指し示す部分と、医学的に言う「肩関節」には概念の違いがあるのです。

肩の痛みは大きく分けて二種類に分類されます。一つは肩関節部分が痛い場合、もう一つは首筋から肩にかけての範囲(肩関節以外)が痛い場合です。首筋から肩にかけての痛みを訴える方は非常に多く、これらは「肩こり」または「肩の痛み」と表現されることが一般的ですが、実際には肩関節が原因ではなく首に問題があり痛みが生じている可能性が十分にあります。

痛みの発生源がどこにあるのか、別の病気が隠されている可能性も十分考慮しながら正しく分析・診断する必要があります。肩関節に由来する痛みは、肩を動かした時や夜間に強く感じることが多く、痛みが長く続くと肩を動かすこと自体を避けるようになります。その結果、肩の動きが徐々に悪くなり、今度はそれが痛みの新しい原因になるという悪循環に陥ります。

このような悪循環を防ぐため、肩の痛みは早期治療が何よりも必要とされます。肩の痛みは急性期(強い症状が発生している時期)から積極的に炎症を抑える治療を加えることが有効とされています。長く放っておくほどに関節が固まり治療には長時間を要します。

五十肩(肩関節周囲炎)の症状と特徴

五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。

主に50歳代を中心とした中高年の方に多い症状ですが、近年ではデスクワークが増えたことで若年化が起きています。肩関節を構成する筋肉や腱などの組織が、年齢とともに弱ってきたり、運動不足や悪い姿勢により正常とは異なる動かし方を繰り返すことで、肩の筋肉などに過剰な負担がかかることで発症すると考えられています。

五十肩の主な症状

肩に痛みが生じて関節の動きが悪くなります。

発症初期は炎症が強く、夜間に痛みで起きてしまう「夜間痛」という症状が出る方がいます。この炎症期は2〜6か月程度継続することがあります。炎症期を長引かせてしまう原因は、炎症のきっかけとなる動作を繰り返すことです。家事や仕事などで痛みが出ることがわかっていても、仕方がなく繰り返してしまう場合など、それぞれ理由があります。

腕を持ち上げたら肩が痛む、もしくは痛くて持ち上がらない、動かさなくても肩の痛みを感じる、肩が痛くて就寝中なのに目覚める、といった症状が見られ、着替えや洗髪などの日常生活にも支障が出ます。バンザイしても耳の高さまでしか挙がらない、腰に手が回せない、下着がつけられない、特定の動きで同じ場所が痛むなどの症状が当てはまる場合は、整形外科への受診をお勧めします。

五十肩の病期と治療

五十肩の病期は、①夜間痛や安静時痛が強い炎症期(2〜6か月)、②可動域の制限や可動時痛がメインの拘縮期(3〜12か月)、③可動域が改善していく寛解期(12〜24か月)に分けられます。

炎症期で痛みが強い時期は安静を第一とし、痛みのコントロールを優先します。痛みを抑えるための内服薬、注射、消炎鎮痛(湿布)、リハビリを行います。痛みがある程度治まってから、積極的に肩を動かします。拘縮期・寛解期は、緊張緩和や可動域拡大を目的にした積極的なリハビリテーションを行います。

自然に治ることもあると聞きますが、放置すると日常生活が不便になることや、癒着が起きると動かなくなることもあります。癒着とは、炎症により関節内で筋肉や腱、関節包などの組織がくっついてしまう現象です。放置していた結果、状態が悪化するケースは良く見られます。1週間経っても痛みが取れない場合は、できる限り放置せず、整形外科の医師に診てもらうことを推奨いたします。

腱板断裂の症状と診断

腱板断裂は、上腕骨と肩甲骨をつないでいる筋肉の腱(腱板)が断裂する病気です。

40歳以上の男性に好発し(男女比6:4)、発症ピークは60代です。来院理由の多くは寝ていられないほどの痛み(夜間痛)が動機になります。腱板は肩峰と上腕骨頭の間に挟まれる形をしており反復的な挟み込みストレスを受けやすいことも一因です。

腱板断裂の特徴的な症状

腕を上げ下げすると痛みや引っかかりを感じたり、反対の腕で痛いほうの腕を持ち上げれば上がるのに自力で持ち上げようとすると痛くて出来ない、といった症状が出ます。

よくある症状として、腕を伸ばした状態では重いものが持てない、後ろにあるものをとれない、シートベルトをしようとすると痛みが出る、下着が着けられない、背中に手が回せないなどの症状を自覚することがあります。

腱板断裂の原因と病態

肩関節腱板は4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)で構成されており、ローテーターカフと言われています。これは上腕骨と肩甲骨をつなぐ板状の腱で、腕を上げたり下げたりする時に上腕骨頭が肩甲骨の関節窩とずれないように保つ働きがあります。

これが損傷・断裂すると腕の上げ下げで肩関節の支点がとれなくなり、痛みや引っかかりなどの症状が出ます。加齢による腱板の変性を基盤として、転倒など様々な程度の外傷が加わって断裂することが考えられています。

腱板断裂の治療方針

痛みが強い場合は、炎症を抑えるためにステロイドなどの注射や消炎鎮痛剤の内服を行います。

断裂した腱板が完全に自然修復することは期待できないので、代償機能を獲得することが目標になります。眠れないほどの痛みや安静時の痛みが和らいでから、肩甲骨・脊柱・骨盤などの動きをよくするリハビリや、切れないで残った腱板の動きをよくするリハビリを行います。ローテーターカフはインナーマッスルの筋トレとして取り入れられることが多く、しっかり強化することで再発防止を図ります。

リハビリを行う時に注意している事は、負荷量の調整です。負荷をかけた時に、代償的な動きが見られていないか、痛みが出ていないかなど状態を見ながら筋トレを行っていきます。理学療法士や作業療法士が代償動作をチェックしながら、適切な負荷量でリハビリをすることが重要です。

石灰沈着性腱板炎の特徴

石灰沈着性腱板炎は、特に40〜50代の女性に多い疾患です。

肩関節周囲の腱板にリン酸カルシウムの結晶(石灰)が沈着して生じます。沈着の原因は明らかになっていませんが、肩を上げる腱(腱板)の内に石灰が付着し、夜間などに急に肩の痛みが生じ、肩が動かせなくなる病気です。

石灰沈着性腱板炎の症状

肩を動かすといきなり痛みます。

腕を持ち上げる、動かすといった動作が痛みのために困難になり、洗髪、ヘアセット、家事などの生活に伴う動きに支障を来たします。急性症状が継続すると慢性症状になり、肩を直線的に上げられない、肩や腕が持ち上げられないといった状態になります。

症状の経過は肩関節周囲炎に類似しており、急性期と慢性期で治療法が異なるため、病態把握や正確な診断が重要です。診断は、関節の痛みの部位や関節の動きの制限を見る診察とレントゲンで腱板に石灰が付着しているのを確認します。詳細な検査として、他の病気との判別に、MRIなどを行うことがあります。

石灰沈着性腱板炎の治療

痛みを感じ始めてから約1カ月程度は強い炎症を伴います。

安静時や夜間にも強い痛みが続くため、肩を動かすこと自体が難しくなります。まずは安静を取りながらも症状の改善に向けたさまざまな治療アプローチが必要となります。四十肩や五十肩と似たような症状が起きるのが特徴的ですが、レントゲンで石灰の沈着が確認できるため、正確な診断が可能です。

肩こりと肩の痛みの関係

肩こりは、首から肩、背中に至る筋肉のこりで、痛み、頭痛、張り、吐き気が生じます。

デスクワークやスマホ・パソコンの操作で、長時間体勢を変えずに首や腕を動かさないと、肩こりが継続する可能性があります。肩甲骨の可動域が狭まることが多いので、程良い運動を取り入れましょう。他の原因としては、ストレスによる歯ぎしり、顎関節症、不正咬合などが挙げられます。

重い頭部を毎日支えている首や肩の筋肉は疲労がたまりやすい場所です。「こり」や「はり」は徐々に痛みへと変わり、首すじ、首の付け根、肩、背中へ広がっていきます。時に頭痛や吐き気を伴うこともあります。

原因は基本的には筋肉の痛みであり、多くの場合骨には特別な異常がみられないことが特徴的です。しかし長期間放置すると症状が悪化し、変形が出現するなど骨にも問題が起こりやすくなるため早めの治療が肝心となります。

整形外科での診断と治療の流れ

肩の痛みや違和感がある場合、症状が軽いうちに整形外科を受診ください。

痛む期間が長い分、治療も長引く可能性があります。整形外科では肩の痛みや違和感が一時的なものか、慢性的なものか診断します。診察と検査による診断結果により、治療方法を考えます。

診察の流れ

レントゲン画像や問診を参考にしながら診察を行います。

より正確な診断のために、筋肉の伸長や関節の動きに関する検査を実施する場合があります。痛みの改善が思わしくない場合、トリガーポイント注射や関節注射も検討します。不安に思うことがありましたら、お気軽にお申し出ください。

リハビリテーション治療

強い痛みや継続する痛みに対しては、最初に痛みを和らげた後にリハビリを行います。

理学療法士の指導の下で、身体の使い方を改善して痛みの根本的な原因を取り除きます。様々な経験を持つリハビリチームが、医師の指示の下で患者様に合わせた治療を実施します。運動器リハビリテーションでは、理学療法士などが個別のリハビリを20分間実施します。物理療法では、温熱療法、電気治療などで痛みを軽減します。

鍼灸治療も選択肢の一つです。健康促進や維持、症状の改善を目的として、身体のツボに鍼や灸を行う治療法で、副作用が非常に少ないのが特徴です。

肩の痛みが出た時の対処法

肩の痛みやこりなどの症状が出た場合、自分でできる対処法もあります。

筋肉を和らげ、血流を改善するために身体を動かすストレッチや肩たたきを行います。血流が良くなると疲労物質が除去されて症状が改善します。痛みが我慢できない場合は、市販の鎮痛薬も使用できます。

やってはいけないこと

しかし、肩の痛みやこりなどの症状の原因は、大体が生活習慣に起因しています。

一時的な対処だけでは根本的な解決にはなりません。炎症が強い急性期に無理に動かすと、かえって症状を悪化させる可能性があります。痛みが強い時期は安静を保ち、炎症を抑えることを優先してください。

また、自己判断で長期間放置することも避けるべきです。1週間経っても痛みが取れない場合は、整形外科を受診することをお勧めします。早期に適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることができます。

まとめ〜適切な診断と治療で肩の痛みから解放されましょう

肩の痛みには、五十肩、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎など、さまざまな病気が隠れています。

それぞれの病気には特徴的な症状があり、適切な診断と治療が必要です。夜間痛が強い、腕が上がらない、特定の動作で痛みが出るなどの症状がある場合は、早めに整形外科を受診してください。

肩の痛みは放置すると悪循環に陥り、治療に長時間を要することになります。急性期から積極的に炎症を抑える治療を加えることが有効とされています。長く放っておくほどに関節が固まり、日常生活に大きな支障をきたします。

渚うめだ整形外科クリニックでは、整形外科専門医およびペインクリニック専門医が在籍し、肩の痛みに対する適切な診断と治療を提供しています。骨粗鬆症治療、リハビリテーション、痛みのコントロールに重点を置き、患者様の健康寿命を延ばし、地域寝たきりゼロをめざしています。

肩の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

渚うめだ整形外科クリニック

〒573-1183 大阪府枚方市渚南町24-31 なぎさクリニックモール1F・3F

電話番号:072-848-3755

最寄り駅:御殿山駅から徒歩3分

診療科目:整形外科・リハビリテーション科・麻酔科

肩の痛みが続く方へ

痛みの出方や腕の上がりにくさによって、確認したいポイントは変わります。初診の流れや持ち物を確認しながら相談しやすい導線です。

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肩の痛みは使いすぎだけでなく、関節や腱、首まわりの影響が関わることもあります。セルフケアで変化が乏しい場合は、早めの確認をご検討ください。

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【著者情報


渚うめだ整形外科クリニック 院長 梅田 眞志

関西医科大学卒業後、同大学大学院博士課程を修了し、再生医療の研究に従事。医学博士。
これまで、八尾徳州会病院、天心堂病院、社会保険滋賀病院、弘道会 萱島生野病院、関西医大枚方病院などで、脊椎疾患・関節疾患・骨粗鬆症・骨折などの外傷治療に幅広く携わってきました。
2018年に渚うめだ整形外科クリニックを開院。地域に根ざした整形外科医療を通じて、運動器疾患のかかりつけ医として診療を行っています。

主な経歴
・2000年 関西医科大学 卒業
・2008年 関西医科大学大学院 博士課程修了(再生医療の研究に従事)
・八尾徳州会病院
・天心堂病院
・社会保険滋賀病院
・弘道会 萱島生野病院 整形外科 医長
・関西医大枚方病院 整形外科(脊椎外科・骨粗鬆症担当)
・2018年 渚うめだ整形外科クリニック 開院

資格・所属学会
日本整形外科学会 整形外科専門医/日本整形外科学会 認定運動器リハビリテーション医/日本整形外科学会 認定リウマチ医/日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医/日本骨粗鬆学会認定医
日本整形外科学会、日本骨粗鬆学会、日本骨折治療学会、日本抗加齢学会に所属。国内外の学会・シンポジウムでも多数の講演実績があります。

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