- 2026年4月11日
- 2026年4月1日
肩甲骨の痛みの原因〜筋肉・骨・内臓疾患の見分け方

肩甲骨の痛みとは
肩甲骨周辺に痛みを感じたことはありませんか?
デスクワークの最中、ふと背中を伸ばした瞬間に感じる違和感・・・。肩甲骨の内側がズキズキと痛む、重だるさが続くといった症状に悩まされている方は少なくありません。
肩甲骨は背中の上部に位置する逆三角形の平らな骨です。この骨と上腕骨から成る肩甲上腕関節は、体の中で最も動く範囲が大きい関節として知られています。肩甲骨周辺には多くの筋肉や腱、靭帯が集まっており、日常生活の中でさまざまな動作を支えています。
しかし、肩甲骨まわりの痛みは単なる「肩こり」だけが原因とは限りません。筋肉の緊張や骨の異常、さらには内臓の不調が関連している場合もあります。痛みの場所や性質によって、考えられる原因は大きく異なるのです。
肩甲骨の痛みを引き起こす筋肉の問題
肩甲骨周辺の痛みで最も多い原因は、筋肉の緊張や疲労です。
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用により、肩甲骨周辺の筋肉が疲労し、硬くなってしまうことがあります。特に猫背や前傾姿勢が続くと、肩甲骨の位置が不安定になり、周囲の筋肉に負担がかかります。
肩こりによる痛み
首から肩にかけて、あるいは首すじから背中にかけて、痛みやこり、張りなどの症状が生じます。
さらに頭痛や吐き気をともなう場合もあります。原因はさまざまで、僧帽筋や肩甲挙筋など肩に関連する筋肉の疲労が主な要因です。現代人の多くは、知らず知らずのうちに「頭が前に出る」姿勢になっており、この姿勢は首や背中の筋肉に大きな負担を与えます。

姿勢の乱れと筋膜の問題
筋膜は筋肉を包んでいる膜で、全身に網のように張り巡らされています。
悪い姿勢が続くことで筋膜にストレスがかかり、硬くなったり癒着したりすると、動かしたときに引っ張られるような痛みが出やすくなります。肩甲骨は肋骨の上に浮かぶような構造になっており、姿勢の影響を非常に受けやすい部分です。姿勢が崩れると肩甲骨の動きも悪くなり、周囲の筋肉が引っ張られて炎症を起こすことがあります。
肩甲骨の内側の筋膜が硬くなると、動かしたときに「突っ張る感じ」や「鋭い痛み」が出ることがあります。特に、同じ姿勢を長くとった後に体を動かすと痛みが強く感じられるのは、この筋膜の問題が関係している場合があります。
骨や関節の異常による痛み
肩甲骨周辺の痛みは、骨や関節の病気によって引き起こされることもあります。
五十肩(肩関節周囲炎)
肩を酷使したり、ぶつけたというわけではないのに、突然肩に鋭い痛みが生じて動かせないといった症状がでたら「肩関節周囲炎」かもしれません。
肩関節周囲炎は「五十肩」とも呼ばれ、関節を構成する骨や軟骨、腱、靱帯などが加齢にともない変性し、肩関節の周囲に炎症を起こすことが主な原因と考えられています。肩甲骨も肩関節と連動して動くため、肩甲骨まわりにも痛みが広がることがあります。
肩腱板断裂(腱板損傷)
肩腱板断裂は、腱板の老化や外傷が原因で起こります。
腱板の腱が断裂した状態で、肩が動かせなかったり、動かす際に痛みが生じたり、夜間に痛みが現れたりします。外傷によるものは半数で、残り半数ははっきりしていません。日常生活の中で断裂が起こってしまい、原因は肩の使いすぎと考えられています。
肩鎖関節脱臼
例えば柔道やラグビーで転倒し、肩を強打した場合などに起こる脱臼です。
鎖骨と肩甲骨の間にある靭帯が断裂することによって、肩関節の一部に痛みや腫れが生じます。肩腱板断裂をともなう場合もあります。脱臼は外部からの衝撃、特にスポーツや転倒によって起こることが多いとされています。
石灰性腱炎(石灰沈着性腱板炎)
老化などで腱板内に石灰(リン酸カルシウム結晶)が沈着することで起こる炎症で、40〜50歳代の女性に多く見られます。
夜間に肩関節の痛みが突然生じることから始まる場合が多く、睡眠が妨げられ、関節を動かすことができなくなります。石灰は当初は濃厚なミルク状ですが、硬く変化し、たまって膨らんでくると痛みが増してきます。
首の神経が関係する痛み
肩甲骨の痛みは、実は首の問題が関係していることもあります。
胸郭出口症候群
首から出た神経は腕神経叢という神経の束となり腕へと続いていきます。
腕へつながる神経が通るスペースには太い血管、筋肉、骨が密集しているため、体格や生まれつきの構造によっては神経が刺激されてしまい、首・肩・腕の痛みやしびれが起こります。この状態を胸郭出口症候群といいます。つり革をつかむ・洗濯ものを干すといった、腕をあげる動作の際に痛みが悪化することもあります。
頚椎椎間板ヘルニア
首の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が、あるべき位置からずれて飛び出してしまう病気です。
飛び出した椎間板が神経を圧迫すると、肩甲骨や首の後、肩、腕などに痛みやしびれなどの症状が現れます。20〜30代の若年層に多いといわれています。頚椎の変形や椎間板ヘルニアなどによって神経が刺激されると、関連痛として背中に症状が出ることがあります。
頚椎後縦靭帯骨化症
頚椎の後ろにある靭帯(後縦靭帯)が骨化する病気です。
神経が圧迫されることで肩甲骨の痛みの他、手足のしびれ、細かい動きができないなどの症状が現れます。少しずつ症状が進行していくことが特徴です。
内臓の不調が原因となる痛み
肩甲骨まわりの痛みは、内臓の不調によって生じる場合もあります。
もとの病気から離れたところに現れる痛みを関連痛(放散痛)といいますが、例えば狭心症や心筋梗塞では肩や腕などにも痛みが現れることがあります。
心臓の病気
心臓に必要な栄養や酸素を供給する冠動脈が狭くなる・つまることで起こる狭心症や心筋梗塞や、大動脈という太い血管の壁が裂ける大動脈解離でも肩甲骨や背中が痛むことがあります。
いずれの場合にも突然の激しい痛みで、冷や汗や呼吸困難を伴うほど強い症状であることが多いといわれていますが、高齢者などでは自覚症状が薄い場合もあるため注意が必要です。
胆石・胆のう炎・膵炎
肝臓で作られた胆汁が十二指腸に至るまでの通り道、胆道に石(結石)ができる胆石症では、半数以上に「胆道痛」といわれる右の肋骨の下やみぞおち、右肩甲骨の下に痛みが生じます。
胆石や胆のう炎、膵炎などの内臓の炎症を起こす病気でも肩甲骨の痛みを感じることがあります。いずれも、突然もしくは繰り返すみぞおちや脇腹の強い痛みが特徴です。肩甲骨まわりに痛みを感じたとき、大きく息を吸って痛みが強くなるといった場合は、内臓の問題が関係している可能性があります。

整形外科で行う検査と診断
肩甲骨の痛みで整形外科を受診すると、どのような検査が行われるのでしょうか。
問診と身体診察
まず、いつから痛みがあるのか、どのような動作で痛みが強くなるのか、他の症状はあるのかなど、詳しくお話を伺います。
その後、肩や首の動きを確認し、痛みの場所や筋肉の状態を診察します。肩甲骨の動きや姿勢の評価も重要です。
画像検査
レントゲン検査では、骨の形や位置、関節の状態を確認します。
必要に応じてMRI検査を行い、腱板や靭帯、神経の状態を詳しく調べることもあります。MRI検査は、レントゲンでは分からない軟部組織の異常を発見するのに有効です。
神経学的検査
首の神経が関係している可能性がある場合は、神経学的検査を行います。
腕や手のしびれ、筋力低下の有無を確認し、神経の圧迫部位を特定します。
痛みを和らげるための治療法
肩甲骨の痛みに対する治療は、原因によって異なります。
保存的治療
筋肉の緊張や姿勢の問題が原因の場合、まずは保存的治療を行います。
痛みが強い場合は、アイシングや冷湿布を用いて炎症を抑えることも効果的です。急性の痛みや炎症を起こしている場合、筋肉や腱がさらに傷つくおそれがあるため、無理にストレッチやマッサージを行うのは避けましょう。
リハビリテーション
痛みが落ち着いてきたら、肩甲骨まわりのストレッチを取り入れることが有効です。
肩甲骨の周辺には、多くの筋肉が集まっており、これらの筋肉が緊張すると痛みが生じやすくなります。適切なストレッチによって、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進させることで痛みを緩和できます。理学療法士の指導のもと、個々の状態に合わせた運動療法を行うことで、筋力強化や姿勢改善を図ります。
薬物療法
痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬を使用することがあります。
内服薬や湿布薬、場合によっては注射による治療も検討します。ペインクリニック専門医による神経ブロック注射が有効な場合もあります。
手術療法
保存的治療で改善が見られない場合や、腱板断裂などの構造的な問題がある場合は、手術療法を検討することもあります。
手術の適応や方法については、専門医と十分に相談することが大切です。
日常生活でできる予防と対策
肩甲骨の痛みを予防するためには、日常生活の中での工夫が重要です。
正しい姿勢を身につける
デスクワーク中は、モニターの高さを目線に合わせ、椅子に深く腰掛けるなど、日常の中でできる工夫をしましょう。
猫背や前傾姿勢を避け、背筋を伸ばした姿勢を意識することが大切です。長時間同じ姿勢を続けないよう、適宜休憩をはさみ、体を動かすようにしましょう。
ストレッチと体操
肩甲骨を動かす簡単な体操を1日数回行うことで、筋肉や筋膜の柔軟性を保てます。
例えば、両手を後ろで組み、肩甲骨を寄せるようにして胸を張るストレッチや、両肩に手を乗せ、肘で大きく円を描くようにゆっくり回す肩回しストレッチが効果的です。これらのストレッチを毎日の習慣にすることで、肩こりや肩甲骨まわりの痛みを予防することが可能です。
適度な運動
運動不足によって起こる筋力の低下や、動かさないことによる筋肉の緊張は痛みの原因となることがあります。
毎日の生活の中で、継続的に行える運動を取り入れるようにしましょう。全身を使うストレッチなど、首や肩・背中の筋肉をよく動かすことがポイントです。
ストレス管理
過度のストレスや緊張は筋肉の緊張を招き、長く続くことで痛みにつながることがあります。
上手な気分転換やストレス解消方法を見つけましょう。スポーツや趣味など楽しめることを持つことはもちろん、自分がストレスや緊張を感じやすいシチュエーションを把握し対策を立てておくなども大切です。
受診の目安とタイミング
肩甲骨の痛みが続く場合、どのタイミングで受診すべきでしょうか。
早めの受診が必要なケース
突然の激しい痛みの場合には体の病気の可能性を考え早期に内科などを受診することが大切です。
冷や汗や呼吸困難を伴う場合、左肩甲骨の痛みに胸の痛みが伴う場合は、心臓の病気の可能性があるため、速やかに受診しましょう。また、手足のしびれや筋力低下を伴う場合は、神経症状の可能性もあるため、早めに整形外科を受診してください。
様子を見てもよいケース
軽い痛みで、日常生活に大きな支障がない場合は、まずは自宅でのセルフケアを試してみましょう。
ただし、1週間以上痛みが続く場合や、徐々に痛みが強くなる場合は、整形外科を受診することをおすすめします。
医師に伝えるべきこと
受診の際は、いつから肩甲骨が痛いのか、他の症状はいつからどんなものがあるのか、できるだけ詳しく伝えることがポイントです。
痛みの場所、痛みの性質(ズキズキ、ジンジン、重だるいなど)、痛みが強くなる動作や時間帯なども重要な情報です。
まとめ
肩甲骨の痛みは、筋肉の緊張や姿勢の乱れ、骨や関節の異常、首の神経の問題、さらには内臓の不調など、さまざまな原因によって引き起こされます。
痛みの場所や性質、随伴症状によって原因を見分けることが重要です。整形外科では、問診や身体診察、画像検査などを通じて正確な診断を行い、個々の状態に合わせた治療を提案します。
日常生活では、正しい姿勢を意識し、適度な運動やストレッチを取り入れることで、肩甲骨の痛みを予防することができます。痛みが長引く場合や、激しい痛みを伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
当クリニックでは、整形外科専門医およびペインクリニック専門医が在籍し、肩甲骨の痛みをはじめとする運動器疾患の診断と治療に力を入れています。御殿山駅から徒歩3分の立地で、土曜日診療や夜間診療(19時30分まで)にも対応しています。
肩甲骨の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
渚うめだ整形外科クリニック
〒573-1183 大阪府枚方市渚南町24-31 なぎさクリニックモール1F・3F
電話番号:072-848-3755
最寄り駅:御殿山駅(徒歩3分)
【著者情報】

渚うめだ整形外科クリニック 院長 梅田 眞志
関西医科大学卒業後、同大学大学院博士課程を修了し、再生医療の研究に従事。医学博士。
これまで、八尾徳州会病院、天心堂病院、社会保険滋賀病院、弘道会 萱島生野病院、関西医大枚方病院などで、脊椎疾患・関節疾患・骨粗鬆症・骨折などの外傷治療に幅広く携わってきました。
2018年に渚うめだ整形外科クリニックを開院。地域に根ざした整形外科医療を通じて、運動器疾患のかかりつけ医として診療を行っています。
主な経歴
・2000年 関西医科大学 卒業
・2008年 関西医科大学大学院 博士課程修了(再生医療の研究に従事)
・八尾徳州会病院
・天心堂病院
・社会保険滋賀病院
・弘道会 萱島生野病院 整形外科 医長
・関西医大枚方病院 整形外科(脊椎外科・骨粗鬆症担当)
・2018年 渚うめだ整形外科クリニック 開院
資格・所属学会
日本整形外科学会 整形外科専門医/日本整形外科学会 認定運動器リハビリテーション医/日本整形外科学会 認定リウマチ医/日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医/日本骨粗鬆学会認定医
日本整形外科学会、日本骨粗鬆学会、日本骨折治療学会、日本抗加齢学会に所属。国内外の学会・シンポジウムでも多数の講演実績があります。
